思春期の心に寄り添う

思春期の子どもの自己肯定感を高める親の寄り添い方

Tags: 思春期, 自己肯定感, 親子関係, 反抗期, コミュニケーション

思春期のお子さんとの関わりは、時に難しく感じられることがあるかもしれません。以前はお互いに分かり合えていたと感じていても、この時期に入ると急に距離を感じたり、コミュニケーションがうまくいかなくなったりすることもあるでしょう。お子さんの反抗的な態度や、何を考えているのか分からないという状況に、どう接すれば良いのか悩んでしまう親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

この思春期という大切な時期に、お子さんの心の中で非常に重要な要素となるのが「自己肯定感」です。自己肯定感とは、「自分には価値がある」「自分はこのままで良い」と思える心の状態を指します。この自己肯定感がしっかりと育まれているかどうかが、お子さんが困難を乗り越え、自分らしい人生を歩んでいくための大きな力となります。

この記事では、思春期に自己肯定感がなぜこれほど重要になるのか、そして親としてお子さんの自己肯定感を育むために、日々の忙しい生活の中でも実践できる具体的な寄り添い方についてお話ししたいと思います。

思春期における自己肯定感の重要性

思春期は、子どもが自分自身について深く考え始める時期です。「自分は何者か」「これからどう生きていくのか」といった問いに向き合い、アイデンティティ(自己同一性)を確立しようと模索します。

この過程で、子どもは友人関係、学業、部活動、自分の見た目など、様々な側面で周囲と比較することが増えます。社会的な評価や他者からの見られ方を非常に気にするようになり、時に自信を失いやすくなります。このような揺れ動く時期だからこそ、「自分は大切な存在である」と感じられる自己肯定感は、心の安定にとって不可欠なのです。

自己肯定感が高い子どもは、たとえ失敗してもそこから学び立ち直る力(レジリエンス)を持ちやすい傾向があります。また、他者の評価に過度に左右されず、自分の価値観を大切にすることができます。一方で、自己肯定感が低い状態が続くと、新しいことに挑戦することを恐れたり、人間関係で悩みを抱えやすくなったりすることがあります。

思春期の子どもの自己肯定感が揺らぎやすい要因

なぜ思春期に自己肯定感が揺らぎやすいのでしょうか。いくつかの要因が考えられます。

親ができる、思春期の子どもの自己肯定感を育む寄り添い方

では、親としてお子さんの自己肯定感を育むために、具体的にどのようなことができるのでしょうか。日々の忙しさの中でも意識できる、いくつかの大切な関わり方をご紹介します。

1. 「ありのままの姿」を認める

お子さんの成績や能力、成果だけでなく、その子の個性や存在そのものを認め、尊重することが最も大切です。

「テストで良い点を取ったから偉い」だけでなく、「あなたがそこにいるだけで嬉しい」「あなたのそういう考え方、面白いね」といったように、条件付きではない愛情を伝えることが、お子さんの安心感と自己肯定感につながります。反抗的な態度をとっている時でも、その子の存在価値を否定するのではなく、「態度は気になるけれど、あなた自身は大切な存在だよ」というメッセージを伝える姿勢が重要です。

2. 結果だけでなく「プロセス」や「努力」に注目する

目標達成の有無に関わらず、お子さんが何かに向かって努力した過程や、そこから学んだことに注目し、言葉にしてみてください。

「頑張って練習していたこと、知っているよ」「難しかったのに、最後までよくやり抜いたね」といった声かけは、結果が出なかったとしても、お子さんの努力する力や粘り強さを認め、次の挑戦への意欲を支えます。完璧でなくても良い、努力すること自体に価値がある、というメッセージを伝えることができます。

3. 失敗を責めず、学びの機会として捉える

思春期は失敗から多くを学ぶ時期です。お子さんが失敗したり、うまくいかなかったりした時こそ、成長のチャンスと捉え、否定せずに寄り添うことが重要です。

「どうして失敗したの」と責めるのではなく、「大変だったね」「次はどうしたら良いか、一緒に考えてみようか」といったように、失敗から学びを得るサポートをしてください。失敗しても大丈夫、やり直せる、という経験がお子さんの挑戦する勇気を育みます。過去にお子さんの失敗に対して厳しく対応してしまった経験があるかもしれません。しかし、これからは失敗そのものではなく、そこから得られる経験に焦点を当てるように意識を変えていくことができます。

4. 子どもの意見や感情を尊重し、傾聴する

お子さんの話に耳を傾け、その子の感じていること、考えていることを真摯に受け止める姿勢を示すことは、お子さんが「自分の気持ちには価値がある」「自分は尊重されている」と感じるために不可欠です。

たとえその意見に反対であったり、お子さんの感情が理解しがたいものであったりしても、まずは最後まで話を聴いてください。「そう感じているんだね」「そういう風に考えているんだね」と、お子さんの内面を理解しようと努める姿勢を示すだけでも、お子さんは安心感を得ることができます。忙しい中でまとまった時間を取るのが難しくても、例えば食事中や移動中など、短い時間でも集中してお子さんの話に耳を傾ける時間を持つことが大切です。

5. 自分で決める機会を与える(自律性の支援)

思春期は、親からの精神的な自立を進める時期です。お子さんが自分で物事を決め、自分の考えで行動する機会を増やすことは、自己肯定感を高める上で非常に重要です。

進路や友人関係など、本人が主体的に考え、決定していく必要がある事柄については、親が先回りして答えを与えたり、指示したりするのではなく、情報を提供したり相談に乗ったりしながら、最終的に本人が決定できるよう支援してください。自分で選び、行動し、その結果を受け止める経験は、「自分にはできる」という感覚(自己効力感)を育み、自己肯定感へとつながります。親としては心配になることもあるでしょうが、お子さんが自分で解決策を見つける力を信じて見守る姿勢が求められます。

6. 親自身の自己肯定感も大切にする

お子さんの自己肯定感を育むためには、親御さん自身が安定した心の状態であることが望ましいです。親御さんが自分自身を大切にし、自分の価値を認めている姿は、お子さんにとっても良いモデルとなります。

忙しい中でご自身のことを後回しにしてしまいがちかもしれませんが、短い時間でも好きなことをしたり、信頼できる人に悩みを話したりするなど、ご自身の心を満たす時間を持つことも大切です。親御さんが心穏やかであることは、結果的にお子さんへの温かい寄り添いにつながります。

忙しい日々でもできるヒント

多忙な日々を送る中で、これらの関わりをすべて完璧に行うのは難しいと感じるかもしれません。しかし、大切なのは時間の長さではなく、関わりの「質」です。

まとめ

思春期のお子さんの自己肯定感を育むことは、その子のこれからの人生を支える大切な基盤作りです。反抗期という形で現れるお子さんの変化は、自立へ向かう自然なステップでもあります。その中で、親御さんがお子さんの「ありのまま」を認め、努力やプロセスを称賛し、失敗を学びの機会と捉え、意見や感情を尊重し、自律を支援する姿勢で寄り添うことが、お子さんの自己肯定感を育む力となります。

過去にお子さんとの関係でつまずきを感じた経験があるとしても、これからでも関係性をより良くしていくことは十分に可能です。焦らず、お子さんのペースを尊重しながら、親御さん自身の心も大切にしながら、少しずつでもお子さんに寄り添うことを続けてみてください。お子さんの成長を信じ、温かく見守る親御さんの存在そのものが、お子さんにとって何よりの支えとなるはずです。